部活中、見ていてニヤけてしまう私。バレたら、真田くんにこっぴどく叱られるだろう。あるいは、仁王くん辺りにからかわれるだろう。でも、仕方ない。だって、可愛いんだもん。
そんな私の視線の先に居るのは、後輩の赤也くん。・・・そして、私の彼氏だ。



「ふぅ〜・・・。」

「はい、赤也くん。お疲れ様。」

「どもっス!・・・・・・・・・ぷはぁ!やっぱ、先輩のドリンクは美味いっスね!」



・・・あぁ!!何て、可愛いことを言ってくれるの・・・??!その可愛さに、私はどうかしてしまうよ・・・!!むしろ、もうどうにかなってる気が・・・。
でも、そこはグッと我慢して!!私は平静を装って、微笑んだ。



「ありがとう。そう言ってもらえると、私も作った甲斐があるよ。」

先輩が礼を言うとこじゃないっスよ!俺らは、先輩のおかげで、部活に集中できるんスから。・・・それに。俺は先輩が作ってくれてる、って思うだけでも、より気合が入りますから。そこにも感謝してるっス!」



ごめんなさい、真田くん。もう、私は我慢できません・・・。だって、可愛いんだもの・・・!!
そう思って、私は赤也くんに抱きついた。



「もう・・・可愛い・・・!!」

「何言ってるんスか、先輩。先輩の方がヨユーで可愛いっスよ!」



キャー、何、今の!!赤也くんの可愛さが、私の中で限界を超えましたけど?!!可愛すぎる・・・!!



「違う。赤也くんの方が可愛いの。」

「違わないっス。先輩の方がぜーったい、可愛い。」



今の「絶対」の伸ばし方(「ぜーったい」の部分ね!)とか、本当可愛い・・・。やっぱり、赤也くんの方が可愛いに決まってるんだから!!
・・・とか思ってたら、案の定、真田くんに大声で怒鳴られてしまった。



「そこ!!何をしている?!!」

「ご、ごめんなさ〜い・・・。」



真田くんの声を聞いて、私は急いで赤也くんから離れた。・・・本当は、まだまだこうしていたかったけど。でも、今は部活中だもんね!



「それじゃ、赤也くん。今日の残りも頑張ってね。」

「ういっス!で、その後は一緒に帰りましょーねっ、先輩?」



私は赤也くんの言葉に勢いよく頷いた。・・・だって、やっぱり可愛いんだもの!!「ねっ」とか「先輩?」とか・・・。どうやったら、語尾にあんな可愛さを出せるの?!
・・・って、取り乱しすぎだ、私。今は部活中。ちゃんと仕事に集中しなきゃ!!・・・でも、可愛いものは可愛いんだもの。なんてことを思っていると、また予想通りの人物に声をかけられた。



「部活中何しとるんじゃ、。」

「仁王くん!」

「そんなに我慢できんのか?」



仁王くんはそう言いながら、ニヤリと笑っていた。・・・やっぱり、からかいに来たみたい。
でも、今の私に、そんなものが通用すると思って?



「うん。我慢できないぐらい、可愛かったの。」

「はいはい・・・。」



あっさり認める私に、仁王くんは呆れてしまったようだ。
ふふ、残念だったわね。仁王くんのからかいなんて、私には利かないんだから。いや、もしかしたら、普段はからかわれてるかもしれない。でもね、今最高に気分が良い私には、何の問題にもならないの。



「どうして、あんなに可愛いのかしら・・・。」

「なんで、と聞かれても知らんが。赤也はそれでえぇんかのう?」

「・・・・・・どういうこと?」



たしかに、仁王くんのからかいは何の問題にもならない。だけど、赤也くんのことなら、話は別だ。



「赤也も男じゃ。惚れた女に『可愛い』と言われて、嬉しいもんかのう?それに、お前さんらは歳も開いちょる。赤也が何も気にしてないとは思えんが?」

「・・・・・・・・・どうだろう。」

「それは赤也に聞きんしゃい。」

「・・・うん、そうだね。そうする。」



仁王くんの話をまともに聞いた私は、赤也くんと一緒に帰るときに、聞こうと思った。



「せーんぱいっ!お疲れっス!」

「うん、お疲れ様。」



でも、部活が終わって、赤也くんにそう呼ばれると、うっかり仁王くんとの話を忘れてしまいそうになった。・・・だって!!「せーんぱいっ!」って呼び方が、また可愛いんだもの・・・!!
って、そう言う風に思っていいのかを赤也くんに聞かなきゃダメなんだった、と我に返る。



「さ、帰りましょーか、先輩。」

「うん。そうだね!」



赤也くんの言葉に、うんと頷き、私たちは歩き始めた。そして、私はそのことについて質問を始めた。



「赤也くん。1つ、聞いてもいいかな?」

「んー?なんスかー??」

「その前に。まず、今日の部活中は、ゴメンね?私の所為で、真田くんに怒られちゃって・・・。」

「いいんスよ、そんなこと!俺は先輩に、ああやってもらえることが嬉しすぎて、そんなことどーでもよく思えますから。」



うっ・・・!!ま、また可愛いことを・・・!!!でも!その確認をしなきゃ!!



「で、そのときも、そうだったんだけど・・・。私って、よく赤也くんのこと『可愛い』って言うじゃない?でも、男の人はやっぱり『可愛い』って言われても、嬉しくないのかなーと思って・・・。」

「そうっスかー?そんなことないっスよ?」

「そう?でもね、仁王くんが、私たちは歳も離れてるんだから、赤也くんが気にしてるんじゃないか、って言ってたの。」

「そんなの関係ないっスよ。」



はっきり言ってくれる赤也くんに、私は頼もしさを感じた。・・・そう、何も可愛いとばかり思っているわけじゃないんだ。きっと、それは赤也くんもわかってくれているんだろう。



「だって、先輩は俺のことが年下だから好き、ってわけじゃないでしょ?」

「もちろん、そうだよ。」

「俺だって、先輩が年上だろうと年下だろうと同い年だろうと、絶対に好きになる自信がありますから。やっぱり、歳は関係ないっス。」

「だよね!」



やっぱり、そうだよね!そう思って、私も強く賛同した。だけど、それだけじゃないんだ。そう思って、私は再度質問を投げかけた。



「でも、歳は関係なくても、『可愛い』って言われることに対して、嫌に思ったりしないのはどうして?」



だって、仁王くんは「赤也も男じゃ。惚れた女に『可愛い』と言われて、嬉しいもんかのう?」と言った。ってことは、歳に関係なく、男の人は『可愛い』と言われたくないってことじゃない?それなのに、赤也くんは「そんなことないっスよ?」と言ってくれた。
特に理由は無いのかもしれないけれど・・・。念の為、赤也くんに訊ねた。すると、その答えは・・・。



「だって、先輩が俺のことを『可愛い』って言うときは、イコール俺のことを『大好き』って思ってるときっスからね!」

「・・・・・・そんなの、赤也くんにはわからないじゃない。」

「いや、わかります!だって、現に間違ってないっスよね?」



ニヤリとしながら言う赤也くんは、全然年下っぽくなかった。むしろ、私よりもよっぽど大人な気がした。そんな赤也くんの目は、まるで全てお見通しだとでも言っているようで。私はその目から逃れるように顔を背けながら言った。



「間違ってます。だって、『可愛い』と思ってるから『可愛い』って言ってるんだもん。『好き』だと思ってたら、『好き』って言うでしょ?」

「そうっスか〜?・・・じゃ、とりあえず、今度『可愛い』って思ったときは、『大好き』って言ってみてくださいよ。絶対、しっくり来ますから。」

「赤也くんが言ってほしいだけじゃないの?」



私は強がって、そう言いながら、赤也くんの方を見た。



「・・・・・・・・・バレちゃいました?」



笑顔でそう言った赤也くんは、やっぱり可愛く見えて、何だか少しほっとしてしまった。



「やっぱり・・・。驚かさないでよ。」

「・・・先輩。・・・驚いたってことは、やっぱり俺の言ったことも、あながち間違ってなかったってことじゃないんスか?」



また、さっきのニヤリとした顔で言う赤也くんに、私は思わず「しまった!」という顔をしてしまった。



「図星なんスね?」

「ち、違うよ!」

「じゃあ、なんで、そんな顔してるんスか?説得力、無いっスよ。」

「あるもん!」

「ないっス!だって・・・、顔真っ赤っスよ?」

「なってない!」

「じゃ、鏡で見てくださいよ。」

「い〜や!」

「ほら!先輩だって、自覚あるんじゃないっスかー!」

「無いったら、無いんだからー!!」



そんなやり取りをしているところを仁王くんに見られていたらしく、次の日・・・。



「お前さんらはまるで同い年のようじゃし、大丈夫ぜよ。」



なんてことを言われた。・・・要は、私が子供っぽいってことですか?!



「はいはい、いいですよ。どうせ、私は子供っぽいです!」



だったら、私は子供らしく、赤也くんの意見も絶対認めてあげないんだからね!・・・・・・・・・本当は、赤也くんの提案に乗った方がしっくり来るのはわかってるんだけど。



「だから、先輩は可愛いんスよ。」

「それ、どういう意味・・・。馬鹿にしてる・・・?」

「違います。俺も『可愛い』って言ったときは、『大好き』って伝えたくなったときっス!」



そう言いながら抱きついてきた赤也くんは、やっぱり可愛いなって思ってしまった。・・・可愛い、つまり・・・・・・の先は言わないからね。













 

私の中で、切原くん=可愛い可愛い後輩、が理想なのです。それを書こうと思ったら、こんな話になりました☆・・・ごめんなさい!

同い年・年下(あるいは年上)に関わらず、切原くんは可愛らしい彼氏だと思うんです。でも、実は彼女さんの方が可愛がられているというか、攻められているというか・・・そんなイメージなのです。
そんな感じをもっと上手く書きたかったなぁ・・・と思います・・・orz(苦笑)

('09/02/17)